PLAY No,15
#山を滑る
SKI
中学・高校と6年間を海外の学校で過ごしてきた野口絵子さんは、
帰国にあたって “やりたいことリスト” を作っていた。
日本食、家族との時間、友達とのおしゃべり、日本での登山。
そうした中にあったのが、スキーだ。
もっときちんと滑れるようになりたい。
その想いを叶えるチャンスがやってきた。
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スキーコーチ
Hidekazu Yokoyama横山 秀和
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登山家見習い
Eko Noguchi野口 絵子
2月の終わり。白馬を訪ねた二日間は抜けるような冬の青空が広がり、山々はどこまでも白く連なっていた。
「雪をかぶった山並みをバックにさっそうと滑るスキーヤーを見て、あんなふうに滑れたら気持ちいいだろうな、って思ってるんです」
とは言いながら、腕前はまだまだビギナー。
そこで白馬に暮らすスキーコーチの横山秀和さんに教えてもらうことにした。
「私、登山はお父さんに教えてもらいましたけど、過去の経験から、新しいことはめっちゃ詳しい人にきちんと教えてもらうのがいちばんの近道だって知ってるんです」
「すごいですよね。歩いたら何時間もかかるところを、リフトだとぴゅーって登っちゃうし、スキーならササッと滑っていける。今日もリフトに乗りながら、全然歩かないのにこんなにすごい景色が見れる山に来れるんだって、不思議な気持ちになってました」
風景に感動し、思い通りにならないスキーに笑う絵子さんを、横山さんは優しく見守りながら、要所要所でアドバイスを添えていく。
「がむしゃらに頑張るとか、何度も何度も繰り返すとか。そういうことが必要なときもあります。だけど、それは上手くなる近道ではないんですよ。絵子ちゃんみたいな向き合い方のほうがいいですよね」
おおらかに笑いながら、横山さんは絵子さんの素性の良さも褒める。
「自分では上手じゃないって言ってますけど、スキーに慣れてないだけ。言葉で聞いたことを体で再現できるっていう意味では、ものすごくセンスがありますよね」
だけど何よりも、と横山さんは感心する。
「ずっと笑顔なんですよ。何かできないことがあっても笑ってるし、急斜面に行っても怖いって言いながらニコニコしてる。すごく楽しそうにしてるから、こっちまで楽しくなってきますよね」
だから聞いてみた。絵子さんはどうしてそんなに楽しそうにしてるの?
「だって山にいて、きれいな景色が広がってて、お天気が良くて、新しいことに挑戦できて、ちょっとずつだけど自分が変わっていってるかな、って思えるんです。これってすごく嬉しいことがいくつも重なってるってことじゃないですか? サイコーですよ!」
それは、山に向かう人が幸福を感じるすべての要素を、ギュッと詰め込んだかのような答えだった。
FIELD
長野県白馬エリア
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WEAR
携帯など小物を入れておけるよう、ポケットが多いものが好みです。リフトチケットなんかも持ち慣れないので、専用ポケットがあると便利ですね。
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INNER
あまり重ね着しすぎると動きにくくなるので、なるべく薄くて保温性のあるものを着るようにしています。そのあたりは登山と似ていますね。
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ACCESSORY
深くかぶれるニット帽だと、耳まで隠れて暖かいんです。機能も大事ですが、帽子はデザインも大事ですよね。色はウェアと合わせるのが好みです。
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WEAR
機能性も大切ですが、やはり気になるのはデザインです。プラス快適性。特に着ていてストレスのない、柔らかい素材のものが好きですね。
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INNER
もちろん汗対策がしっかりできること。あとは薄くても暖かいものを選んでいます。タイトフィットが苦手なので、サイズはゆったりめです。
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ACCESSORY
天気に合わせて、雨ならヘルメット、雪ならニット帽、晴れていればキャップですね。ゴーグルだけはデザインよりもレンズ機能重視です。
QUESTION TO MS. NOGUCHI
『スキー』の前に
思っていたこと
「スキーは小学生のときにちょっと経験したことがあるくらいで、あとは高校生のときに3回くらい。なので、The 初心者なんです。だけど、いろんなところでスキーをする人を見ていて、足を揃えて滑るのがかっこいいなぁと思って憧れてました。だから今回はその、足を揃えて滑れるようになりたいなと思ってました。しかも、なめらかにエレガントにかっこよく。それが今回の目標です」
『スキー』を
して感じたこと
「楽しいけど、久しぶりだったしちょっと怖かったです。でもレベルアップを狙ったり、何か変化が欲しいときって、その分挑戦しなきゃいけないと思うんですよね。今回はただ楽しく滑るだけじゃなくって、新しいことに挑戦する、自分の滑り方を変えることが目標だったので、難しさもあったし、思い通りにいかないつまづきも感じました。でもその分、自分でもちょっと変わったな、っていう手応えや達成感がありました。つまり今の感想は、スキー最高!ですね」
『スキー』を教わる、
ということについて
「こんなに違うんだって思いました。初日、スキーでうまく止まれなかったんです。だけど、おへそを地面に向けるつもりで体をかぶせるといいよって、コツを教えてもらって。そしたら全然力入れずに、スッと止まれたんですよ。ほかにも滑ってるときの体の向きや姿勢にも分かりやすいコツがいっぱいあって、みんなこれを知ってるんだ、だから上手に滑れるんだ、って思いました。やっぱりきちんと教わるって大事ですよね。ひとりで滑ってたら絶対こうはなれないし、こんなに楽しめなかったと思います」
登山と『スキー』
「登山とスキーは似てるところもあるし、全然違うところもあります。どっちもすごく気持ちが開放されて、心の芯までリフレッシュさせてくれるところは似ています。違いは時間ですかね。登山は気持ちよさを得るまでが長いんですよ。何日もかけて登ることがあるくらいですし。だけどスキーは滑りながら爽快感や課題を乗り越える真剣さ、達成感なんかを味わうことができます。そこが大きな違いかな」
これから
始める人へ
「楽しみながら、続けることを考えてみてほしいです。登山でも旅でも私はいつも景色を楽しみにしてて、写真を撮ったりしながら、時間やお天気で変わっていく様子を眺めてるんです。山では上手くいかないことっていっぱいあるけど、写真を見返してると、どれも二度と見れない風景なんだな、だからこそ行ってよかったな、って思えるんですよね。そうやって次も行こう、また次も行こうって挑戦を続けるきっかけを自分からつないでいれば、きっとスキーも上手くなるし、もっと楽しくなって、何かに繋がっていくんじゃないかなって思います」
QUESTION TO MR. YOKOYAMA
『スキー』の
楽しさって?
「もちろん景色を楽しんだり、遠くに出かけたりする非日常感が楽しい、っていうのはあると思います。けど白馬生まれの僕なんかが子供の頃からずっとスキーを楽しめてるっていうのは、非日常感以外のところにも魅力があるからなんだと思います。それは単純に滑ることもだけど、上手くなっていくことなんじゃないかなと思います。しかも、どこまで行ってもゴールがない。その無限の深さに楽しさの本質があるような気がしますね」
習うことのメリット
「同じ上手くなるにしても、お客様が手応えをつかみながらステップアップできるようなお手伝いをする。それが教える側の役割だと思うんです。しかも厳しい練習やストイックなトレーニングじゃなく、楽しみながら。そうやって、次のレベルにいったときにさらに上達できるような基礎を知らず知らずのうちに身につけておく。それが最短で実現できることにあると思います」
これから始める人へ
「スキーを長く楽しむコツがあるとしたら、それは続けることだと思うんです。僕が長く楽しめてるのは、スキーができる環境にいて続けられてるからなんですよ。だから、いい環境に早く馴染んでほしいと思います。都会に住んでいらっしゃる人でも、お気に入りのスキー場が見つかって、定宿ができて、知り合いが増えて、っていう心地よくスキーに触れられる機会が多くなることで、自然と続いていくのかなって思います」