2020年6月はじめ、昨年から計画していた伝説のヒヨコを探す旅に行ってきました。
目的の山は、1726mの北海道の夕張山地最高峰の芦別岳だ。
この時期の芦別岳は雪が多く残り、特に山頂直下の雪渓は斜度がきつく、アイゼン、ピッケルが必要なほど危険だ。
いたるとこで雪渓に阻まれるためコースタイムも伸びてしまう。
しかし、この時期に登らなければヒヨコには出会えない。
雪解け直後の数日しか出会えない伝説のヒヨコちゃんなのだ!
この日は、最高気温31℃になる予報のため、まだ涼しい夜明けと同時に入山を開始した。AM4時30分。
暑くなるのでインナーにはMILLETドライナメックメッシュを着用し、
飲み物も3L用意したので、ザックは大容量のプトレイ インテグラーレ 45+10を使用した。
入山してすぐに、うめき苦しむと言う名がついた呻吟坂に突入する。
まさに、うめき苦しみ見晴らし台に到着し、富良野盆地と十勝岳連邦を見渡す。
これまで、展望が一切見えない長い坂を歩いてきたので、
かなり標高が上がった印象を受ける。快晴だ。
呻吟坂
ここからは少し風も出始め快適な登山が続いた。
半面山に到着し、ひよこ祈願の鐘を鳴らす。
半面山には、なぜか鐘があるのだ。
「ひよこ~♪」と叫び、大雪渓が残る雲峰山へ突入した。
ここで、帽子の上に載せていたサングラスを、どこかに落としたことに気が付く・・・
まぶしくて、まぶしくて、体力がどんどん奪われていった。
この山行一番の難所となった。
雲峰山に到着し、かなりの斜度の雪渓と芦別岳山頂を見上げる。
脈が上がるが、ヒヨコに会うには行くしかないのだ。
コースタイムは余裕を持っていたので順調だ。
気温がかなり上がり、雪渓の踏み跡がほぼ見えなくなっていたので、キッキングで固めながら進む。
下を見るのも怖くなるほどの斜度であった。
やっとの思いで山頂へ到着。
まず、山頂へ行こうと進む。
すると、先を行くパートナーが叫んだ。
「ひよこーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
まさかの山頂の看板を見つける前に、伝説のヒヨコを見つけてしまったのである。
二人で、ヒヨコの姿を確認し、ハイタッチをした。
この興奮のまま撮影をすると滑落の危険があるため、心を落ち着かせるため、山頂へ行き、しばし休憩。
しかし、友人はヒヨコの興奮を抑えられない様子だ。
バタバタしている。
山頂は少し気温が下がり、風もあるので、風で汗が冷えないように、ティフォン タフ ストレッチ エクスプロア ジャケットを着こんだ。風を通さないティフォンは一枚あると重宝する。
雨にも強い。
ヒヨコがいたのに、なぜ休憩と思った方もいるでしょう。
ヒヨコの正体は、過酷な環境の高山にひっそりと咲く、『ツクモグサ』という稀少な高山植物だったのです。
絶滅危惧種にも指定されるほど数が少ないのである。
高山植物を愛する登山者の憧れの存在です。
『ツクモグサ』
この日は、満開の状態で出迎えてくれた。
本当に最高の日に行けたと思う。
なぜヒヨコかと言うと、
黄色い花に、黄色いフワフワの毛が生えているのです。
まさに、高山のひよこちゃん。
その美しさに、僕は鳥肌が立ち、しばらくカメラを持つ手も震えていた。
ツクモグサの他にも、ウラシマツツジ、ガンコウラン、コメバツガザクラ、ミヤマキンバイなどが咲いていた。
黙々と撮影を続け、気がつくと山頂に2時間以上も居座っていた。
他の登山者は誰も来なかった。
季節外れの31℃の気温で登ってくる人もなかなかいないか・・・
『ツクモグサ』
長年の夢が叶い、気持ちよく下山を開始した。
雪渓ではお決まりの尻滑りをして、ドライナメックメッシュが尻に食い込んで痛かったのもいい思い出だ。
動物写真家なのに、高山植物を撮影にいったのか!
と、思いますよね?
動物写真の基本は、山歩きなのです。
山を歩き、野生動物のフィールドサインを見つけ、行動を予測します。
そして、やっと撮影をする準備に入ります。
この山でも、エゾオコジョやエゾクロテンの糞、タカの捕食の跡、
エゾフクロウのペリットなどを発見しました。
エゾシマリス、エゾヤチネズミの姿も見られました。
遠くの雪渓にはエゾヒグマの足跡も確認できました。
一度、山に登るだけでも、これだけの情報が得られるのです。
これからも、MILLETとともに、
山を楽しもうと思います。
動物写真家・佐藤圭