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2018年6月18日

ヒマラヤキャンプ2018-未踏峰パンカールヒマール(6264m)への挑戦 by 杉本龍郎

去る5月8日、花谷泰広氏が率いるヒマラヤキャンプ隊が未踏峰パンカールヒマール(6264m)に初登頂を果たした。今回はそのメンバーの一人・杉本龍郎さんにはじめてのヒマラヤ挑戦について語ってもらいました。


今回のヒマラヤ遠征は僕にとってはじめてのヒマラヤ登山でした。それは今までやってきた日本やヨーロッパアルプス、ニュージーランドでの登山とはいろいろな面で大きく異なるものでした。まず、山のスケールが格段に大きいことや交通機関のインフラが整っていない為に登山を始めるスタート地点であるベースキャンプに行くまでに何日もかけて歩きます。
そして、ベースキャンプについてからも実際にサミットプッシュをするまでに、何日もかけて高度順応、偵察を行い、天候の様子を伺い、体調管理を含むいろいろな準備を整えてようやくサミットプッシュに移ります。サミットプッシュでは、偵察通りに行かないこともしばしばあったり、天候や雪の状態の変化、体調の悪化など様々な困難にぶつかりながらも協力して解決していき、やっとの思いで目標とするピークに登頂する。
といった、とにかく1つの山に対して長い日にちをかけて対峙し挑んでいく、というものです。

そんなヒマラヤ登山の中でも今回挑んだのは未踏峰。情報も遠目からの写真くらいしかなく、麓の村人に聞いても情報は少ない、というか名前を伝えても誰も何のことを指しているのか分からないという状況でした。
そんな状況の中で全隊員6人のうちヒマラヤ登山経験者は隊長の花谷さんただ1人で、その他の隊員は僕を含め初めてのヒマラヤ登山でした。
山のスケールもケタ違いで、インフラや食文化などネパールという国自体も日本とは大きく異なるなか、文字通り手探りで進めていった山行になりました。
登山としては、当初予定していたルートの氷河の状態が悪く、今回の隊員の実力では突破できないと判断し、一度ベースキャンプごと移動して違うルートにて再挑戦し、最後にはメンバー全員でどうにか登頂することが出来、結果としては成功という形を収めることが出来ました。

[デカイ山に登りたい]そんな想いを抱いているときに、ちょうど山岳ガイドの花谷氏が主催する〈ヒマラヤキャンプ隊〉の募集を見つけました。ヒマラヤはいつか登りたいと考えていたもののなかなか個人で登りにいくのは難しく、キャラバン中のポーターの手配、ルートによって変わってくるパーミッションの取得、高所順応のタクティクスなどいろいろとハードルが高かったのです。また、自分自身の山行は少人数やもしくは単独のものが多く、5,6人のメンバーで役割分担を決め力を合わせて登るということもやっておきたいとも同時に考えておりました。そんなときに、突然目にした20代のメンバーを中心にしたヒマラヤキャンプは、自分にとっては「持って来い」のプロジェクトですぐに申し込みました。
日本での準備期間や、遠征中にいろいろと困難はありましたが、最後は結果として、全員登頂を果たすことが出来まして、隊としては成功を収めることが出来ました。

ただ、隊としては成功でも、個人的にはスッキリせず煮え切らない感覚が残りっています。それは、本当に自分の力で登ったのか、ということです。
今回の遠征はあくまでヒマラヤキャンプという公募登山隊に参加したもので、自分の実力というよりもお膳立てされて登らせてもらったという感覚が自分の中に残っています。
公募登山隊というものはそういうものなのかもしれませんが、自分の中では未踏峰に初登頂したことを、両手を挙げて素直に喜べない自分がいることも事実でした。

今回は初のヒマラヤ登山で、本当に多くのことを勉強させてもらいました。
今回経験したこと、勉強したことを糧にして今後も登山を続け、そのうちもう一度ヒマラヤに挑むと言うことが、自分の使命かと感じております。それは、花谷氏の考えるヒマラヤキャンプの目的でもあるように。
しばらくは日本をベースにして自分の登山を続けて実力をつけながら、今度は自分が心から納得のいくスタイルで再度ヒマラヤを目指したいと思います。可能であれば次回も未踏峰に挑めればと思います。

この想いを忘れずに、精進し続けまた必ずヒマラヤにて自分自身の[デカイ山]と対峙したいと思います。

プロフィール:
杉本龍郎
1988年生まれ。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。
スイスを拠点にしたヨーロッパアルプスや、ニュージーランドでのトレッキングガイドを経て、現在は登山ガイドとして夏山から雪山、岩登りまで幅広くガイドとして活動。
ヨーロッパアルプスの4000m峰やニュージーランドのサザンアルプスにおいて多数の登頂歴あり。
2018年4月~5月にかけてヒマラヤキャンプ隊にて、未踏峰パンカールヒマール(6264m)に登頂。

◆主な保有資格
・日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ
・ウィルダネスファーストエイド(WFA)
・スイス政府観光局認定スイススペシャリスト
・総合旅程管理主任者