こんにちは。KUSACOです。
私は最近、朝活に勤しんでいます。
昼間の気温が高くなり、植物たちが一気に動きだす時期。
あそこのあの子は出たか?!咲いたか?!気になって居てもたってもいられないのです。
森や林はまだ雪深いですが、その中を流れる沢の斜面と木々の根元はいち早く雪が溶けます。
そういった場所を狙って、植物達の芽生え姿を探し歩きます。
沢の斜面は雪解けが早い
ツルネコノメソウ。寒くてずっと縮こまってましたが、鮮やかな葉が広がってきた。
エゾエンゴサク。枯葉を押しのけ、力強く咲いていた。
ヒメイチゲ。出てきたばかりで、まだ完全に展葉していない。
ぽっかりと空いた木々の根元を注意深く見ていると、
お目当ての植物がやっと顔を出していました。
ザゼンソウ(Symplocarpus foetidus)
皆さん、ザゼンソウという植物をご存じでしょうか。
北海道から中部地方の湿った場所に生育し、なかなかインパクトのある見た目をしている植物です。
外側の花びらのように見えるのは仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれるもので、
中心部に見えるいぼいぼの塊は肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれるものです。柄の無い小さい花が多数集まり、穂状になっています。
仏炎苞が肉穂花序を包み込む形態が、袈裟を着て座禅を組む僧侶の姿に似ていることから「ザゼンソウ」という和名がつけられたそうです。
仏炎苞のこの渋い色味……とても好みです。
見た目だけではなく、生態もユニークです。
なんと、自ら発熱して周りの雪を溶かすというのだ!
発熱する部分は肉穂花序で、外気温が氷点下になっても発熱によって肉穂花序の体温は20℃前後に保たれるそう。
発熱する植物は世界でみてもかなり少なく、実はハスもそのうちのひとつです。
発熱時には強烈な悪臭を放つと言われており、Skunk Cabbage(スカンク・キャベツ)という英名がついています。
発熱によって周囲の雪を溶かしていち早く開花し、匂いによって早春の少ない虫たち(小さいハエの仲間)を誘引して受粉の確立を上げていると考えられています。
寒冷地で生き抜くための、賢い生存戦略ですね。
さらにザゼンソウは、性転換をする植物です。
最初は女性の身体の構造をしてますが、次に両性、最後は男性へと変化していきます。
この仕組みは雌性先熟と呼ばれ、逆に雄性先熟の生物も存在します。
これは、自家受粉を避ける仕組みのひとつ。ひとつの花の中に雄しべと雌しべがあると、自分の花粉が自分の柱頭につきやすくなってしまいますよね。
調べると、どうやら発熱して匂いを放つのは女性である時のようだ。
これまで私はどうもタイミングが悪いのか?
鼻が詰まっていたのか?
積極的に嗅いできましたが、臭さを感じたことがありませんでした。
これまでは雪がほとんど解けてから観察していたので、もっと早くに嗅がなきゃダメだったのだろう。
今年こそはと意気込んで、様子を見に何度も通いました。
通い続けて1週間。
ザゼンソウがようやく出てきました!
花粉も出始めだ。発熱期間になんとか間に合ったか?
わくわくしながら、鼻を近づける。
どれどれ匂いは……
………臭い!!なにかが腐ったような匂い!!
たしかに臭い。臭いけど、相当近くで嗅がないと匂いは伝わって来ませんでした。
くさ~~~い!!けど、嬉しくて満面の笑み!
オエッ…となりつつも、念願叶って大満足。
でも、もっと匂いが強いタイミングに出くわせるかも。
まだしばらく嗅ぎに行こうかなぁ。
~おまけ~
ふと気づいたら、私の背後に一匹のキタキツネ。
ザゼンソウに夢中で全く気付けませんでした。
人から餌をもらった経験があるのでしょう。目が合うと、一気に近づいてきました。
キタキツネ。なにもあげないよ!
しばらく歩いて、次は沢でエゾエンゴサクに夢中に。
よし帰るか。と振り返ると、また!また君か!
また音もなく背後をとられました。恐るべし。
エゾエンゴサクを見ている風のキタキツネ。
出勤前の1時間弱で、こんなに楽しい時間が過ごせるなんて。
早起きは三文以上の得がありますね!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
KUSACOからのお願い。
踏み荒らすことが無いように、硬い雪の上から観察できる時間帯・場所を狙いました。
匂いが気になった方がいるかと思いますが、他の植物を踏み荒らすことが無いようにマナーを守って野草観察を楽しみましょう。
足元には、必死に芽吹く小さな命がたくさんいます